コピー機の倍率ボタンに並ぶ「141%」「122%」「115%」「71%」。中途半端な数字に見えますが、これは誰かが使いやすさで決めた値ではなく、紙の規格から一意に決まる計算結果です。仕組みが分かれば、ボタンに無い組み合わせ(B5の原稿をA3に貼り込みたい、など)でも自分で倍率を出せます。この記事ではA判・B判の寸法を並べ、倍率がどう決まるかを換算表で示します。
A判は「面積1平方メートル」と「1:√2」で決まっている
A判の出発点はA0で、面積がちょうど1平方メートルになるように決められています。そのうえで縦横比を1:√2に固定してあるため、長辺を半分に折ると比が変わらないまま次の判になります。841×1189mmのA0を折るとA1(594×841mm)、もう一度折るとA2——という具合です。
日本のB判も同じ考え方ですが、出発点の面積が1.5平方メートルです。A判とB判が交互に並ぶ「A4・B4・A3」のような系列になるのはこのためです。
| 番号 | A判の寸法 | A判の面積 | B判の寸法 | B判の面積 |
|---|---|---|---|---|
| 0 | 841 × 1189 mm | 1.000 m² | 1030 × 1456 mm | 1.500 m² |
| 1 | 594 × 841 mm | 0.500 m² | 728 × 1030 mm | 0.750 m² |
| 2 | 420 × 594 mm | 0.249 m² | 515 × 728 mm | 0.375 m² |
| 3 | 297 × 420 mm | 0.125 m² | 364 × 515 mm | 0.187 m² |
| 4 | 210 × 297 mm | 0.062 m² | 257 × 364 mm | 0.094 m² |
| 5 | 148 × 210 mm | 0.031 m² | 182 × 257 mm | 0.047 m² |
| 6 | 105 × 148 mm | 0.016 m² | 128 × 182 mm | 0.023 m² |
倍率は「面積比の平方根」で出せる
拡大・縮小は面積ではなく辺の長さで指定します。面積を2倍にしたいなら辺は√2倍、面積を1.5倍にしたいなら辺は√1.5倍です。つまり覚えるべき数は2つだけです。
- 隣の判へ(A4↔A3、B5↔B4):面積2倍なので √2 = 1.4142…
- A判↔B判(A4↔B4、A3↔B3):面積1.5倍なので √1.5 = 1.2247…
- 2つ違う判へ(A4↔A2):面積4倍なので ちょうど2倍
実際の寸法から計算すると次のようになります。短辺と長辺で値がわずかに違うのは、規格の寸法が整数ミリに丸められているためです。「収まる倍率」は小さいほうを切り捨てた整数(この値なら確実に収まる)、「四捨五入した値」は近い整数に丸めたものです。
| 変換 | 短辺の比 | 長辺の比 | 収まる倍率 | 四捨五入した値 |
|---|---|---|---|---|
| A4 → A3 | 141.43% | 141.41% | 141% | 141% |
| A3 → A4 | 70.71% | 70.71% | 70% | 71% |
| A4 → A2 | 200.00% | 200.00% | 200% | 200% |
| A4 → B4 | 122.38% | 122.56% | 122% | 122% |
| B4 → A4 | 81.71% | 81.59% | 81% | 82% |
| B5 → A4 | 115.38% | 115.56% | 115% | 115% |
| A4 → B5 | 86.67% | 86.53% | 86% | 87% |
| A3 → B5 | 61.28% | 61.19% | 61% | 61% |
読み取れることが3つあります。
1. 「141%」と「71%」は逆の操作だが、足しても200%にならない
A4→A3が141%、A3→A4が71%。141と71を足すと212で、直感的な「行きと帰り」の関係になっていません。これは倍率が掛け算の世界の値だからです。1.4142×0.7071=1.0000で、掛けると元に戻ります。拡大してから同じ数字で縮小しても戻らないのは、この関係を足し算で考えてしまうときの典型的な誤りです。
2. 「71%」は四捨五入した値で、そのままでは0.87mmはみ出す
A3→A4の計算値は70.71%です。四捨五入すると71%になりますが、この値で縮小すると A3の短辺297mm × 0.71 = 210.87mm で、A4の210mmを0.87mmだけ超えます。同じことがB判との変換でも起こり、B4→A4の82%では 257×0.82=210.74mm(0.74mm超過)、A4→B5の87%では 210×0.87=182.70mm(0.70mm超過)です。余白のある原稿なら気づきませんが、フチまで図や罫線がある原稿では端が切れます。確実に収めたいときは切り捨て側(70%・81%・86%)を手で入力してください。
3. 短辺と長辺で倍率が違うので、小さいほうを使う
A4→B4は短辺が122.38%、長辺が122.56%です。大きいほう(122.56%)を採用すると短辺が 210×1.22559=257.37mm になり、B4の257mmを約0.37mmはみ出します。逆に小さいほう(122.38%)なら長辺は 297×1.22381=363.47mm でB4の364mmに収まります。ズレは短辺と長辺のどちらに出るか決まっていないので、両方を計算して小さいほうを選ぶのが安全です。
おまけ:縦横比が完全な√2ではない判もある
整数ミリに丸めた結果、比は判ごとに少しずれます。実際に計算すると A4 は 1.41429、A5 は 1.41892、A6 は 1.40952 で、√2(1.41421)に対して A5 は 0.33% ほど縦長、A6 は 0.33% ほど横長です(A4 のズレは 0.005% で無視できます)。「A判はどれも同じ形」は厳密には成り立ちません。フチなし印刷や型抜きのように寸法が効く場面では、比ではなく実寸で確認してください。
実務でつまずくところ
- ボタンに無い倍率が必要なとき:出したいサイズの短辺 ÷ 原稿の短辺で計算します。B5原稿をA3に貼り込むなら 297÷182=163%です。
- 2枚を1枚にまとめるとき:A4を2枚並べるとA3になります。倍率は100%のまま、用紙をA3にして「2in1」を選ぶのが正解で、縮小は不要です。
- 資料の一部だけ拡大したいとき:倍率は面積ではなく辺に効くので、141%にすると面積は2倍になります。文字を「2倍の大きさ」にしたいときの倍率は200%で、紙は2つ上の判が必要です。
- 海外のソフトやプリンタを使うとき:B判は日本独自です(後述)。設定画面の「B5」が日本のB5とは別物のことがあります。
注意:B判は日本独自で、ISOのB判とは別物
ここまでのB判はJIS(日本産業規格)のB判で、B0が1030×1456mm=1.5平方メートルです。一方ISOにもB判があり、こちらはB0が1000×1414mmで、A判の各判の中間サイズとして定義されています。B5でいうと日本が182×257mm、ISOが176×250mmで、6〜7mm違います。海外製のソフトやプリンタのドライバで「B5」を選ぶと、日本のB5より一段小さい紙として扱われることがあります。A判はISO共通なので、国をまたぐやり取りではA判に寄せるのが安全です。
よくある質問
A4をA3に拡大するときの倍率は何%ですか?
A判とB判の間の倍率はどう出しますか?
短辺と長辺で倍率が少し違うのはなぜですか?
海外のB5と日本のB5は同じ大きさですか?
寸法はA判(ISO 216/JIS P 0138)と日本のB判(JIS P 0138)の呼び寸法です。面積・縦横比・倍率は、その呼び寸法から計算した値を掲載しています(面積は小数第3位まで、倍率は小数第2位まで)。コピー機の倍率ボタンの表示値は機種によって丸め方が異なります。2026-08-10 時点。