PDFを画像にするとき、解像度の選択肢が「等倍・2倍・3倍」としか書かれていないことがあります。これが何DPIなのか分からないまま最高画質を選び、1.8 KBのPDFが3ページで209.5 KB——約119倍のファイルになるのはよくある話です。この記事ではPDFを画像に変換とまったく同じ経路(ブラウザのcanvas)で、中身の違う3種類のPDFを倍率・形式別に書き出し、実バイト数を測りました。結論を先に書くと、選ぶべき倍率は用途で決まり、PNGとJPGのどちらが小さいかはページの中身で逆転します

「倍率」は実効DPIに直せる

PDFの座標はポイント(pt)で、1 pt = 1/72インチと決まっています。画像化の倍率1は「1 pt を 1 px として描く」という意味なので、PDF上の物理寸法に対する実効解像度は等倍=72 DPIです。あとは倍率をかけるだけで、2倍なら実効144 DPI、3倍なら実効216 DPIになります。A4(210×297 mm = 595×842 pt)で確かめると、595 px ÷ 8.268 インチ = 72.0 dpi と一致します。

これは保存画像に記録されるDPI情報とは別です。HTML仕様は「形式が解像度メタデータを持てるなら96 dpiとして記録する」と定めていますが、実際に何が書かれるかは canvas.toBlob() の実装によって異なります。今回測定したChromium系ブラウザでは、PNGに解像度チャンク(pHYs)が無く、JPGのJFIFは単位なし(画素アスペクト比1:1)でした。つまり2倍は「PDF上の1インチを144ピクセルで描く」設定ですが、書き出した画像に実効DPIの144が記録されるとは限りません。印刷ソフトがメタデータだけで配置サイズを決める場合は、画素数を基準にするか、書き出し後にDPIを指定してください。

倍率実効DPIA4の画素数画素の総数本文12ptの高さ
等倍72 dpi595 × 842 px0.50 メガピクセル12 px
2倍144 dpi1190 × 1684 px2.00 メガピクセル24 px
3倍216 dpi1785 × 2526 px4.51 メガピクセル36 px

印刷したときの実寸から必要な画素数を逆算したい場合は、DPI・印刷サイズ計算で「画素数・DPI・出力サイズ」のどれか2つを入れれば残りが出ます。

測り方

中身だけが違う3種類のA4・1ページを用意し、同じ手順で書き出しました。PDFの描画は pdf.js、書き出しは canvas.toBlob()、JPGの品質は0.92(ツールの設定と同じ)、JPGは背景を白で塗ってから描いています。測定にはChromium系ブラウザを使いました。

  • A:文字・余白多め — 当サイト同梱のサンプルPDF(見出し20pt+本文12ptが数行、残りは余白)。ファイル自体は1.8 KB。
  • B:文字びっしり — 同じA4に本文10ptを60行敷き詰めたもの。
  • C:写真1枚 — A4全面に写真を1枚配置したもの。

実測:同じ倍率でも中身で結論が変わる

数値はいずれも1ページあたりのバイト数です。「JPG÷PNG」が100%を超えていれば、そのページではJPGのほうが重いことを意味します。

ページの中身倍率PNGJPGJPG÷PNG
A 文字・余白多め等倍27.1 KB16.6 KB61%
A 文字・余白多め2倍75.1 KB45.0 KB60%
A 文字・余白多め3倍143.2 KB79.0 KB55%
B 文字びっしり等倍142.0 KB161.9 KB114%
B 文字びっしり2倍542.6 KB489.9 KB90%
B 文字びっしり3倍926.1 KB825.5 KB89%
C 写真1枚等倍92.0 KB29.7 KB32%
C 写真1枚2倍164.6 KB77.8 KB47%
C 写真1枚3倍237.1 KB140.8 KB59%

読み取れることが3つあります。

1. 文字が密なページでは、JPGのほうが大きくなることがある

Bの等倍で PNG 142.0 KB に対し JPG 161.9 KB(114%)。「JPGのほうが軽い」という思い込みが逆転しました。JPEGは滑らかな階調を得意とする一方、文字の輪郭のような急な明暗差を苦手とし、しかもそこを保とうとしてデータを使います。逆にPNGは、白地に黒文字のような色数の少ない画像を強く圧縮できます。倍率を上げるとこの差は縮まりますが(2倍で90%、3倍で89%)、それでも文字ページのJPGは「劇的に軽い」わけではありません。

2. 写真ページはJPGが圧勝する

Cの等倍で PNG 92.0 KB に対し JPG 29.7 KB(32%)。約3分の1です。写真のように色数が多く滑らかな絵柄では、PNGは可逆圧縮の分だけ確実に重くなります。ページに写真が1枚でも大きく載っているならJPGを選んでください。

3. 倍率を上げても、容量は画素数ほどには増えない

等倍から3倍にすると画素数は9倍になりますが、容量は9倍にはなりません。実測ではPNGでAが5.3倍、Bが6.5倍、Cが2.6倍でした。拡大しても白地や平坦な部分は増えないため、増えるのは「輪郭の情報」だけだからです。倍率を1段上げるコストは、思っているより小さい——特に写真ページ(Cは3倍でも237.1 KB)では顕著です。読みやすさに不安があるなら、素直に上の倍率を選ぶほうが得になりやすいと言えます。

何倍を選べばいいか

  • 画面で読む・チャットで共有する:2倍(実効144 dpi)。等倍だと本文12ptが12 pxにしかならず、スマホで拡大したときに輪郭が崩れます。PDFを画像に変換の既定が2倍なのはこのためです。
  • 資料に貼り込む・サムネイルにする:等倍(実効72 dpi)で足ります。貼り込み先で縮小されるなら、大きく出しても意味がありません。
  • 文字を細かく読ませたい:3倍(実効216 dpi)。ただし表のとおり容量は素直に増えるので、必要なページだけ3倍にするほうが実際的です。
  • 印刷して配る:一般に印刷用の原稿は300 dpi以上が目安とされます。A4なら2480×3508 px、倍率にすると約4.2倍が必要で、3倍では届きません。印刷が目的ならPDFのまま渡してください。
  • それでも重いとき:倍率を下げる前に、まず形式を見直します(文字ページならPNG、写真ページならJPG)。そのうえで小さくしたいなら画像圧縮で品質を調整するほうが、解像度を落とすより読みやすさを保てます。

注意:測った条件でしか成り立たない

ここの数値はこの3種類のページをChromium系ブラウザで書き出した結果です。フォントの種類、図やグラフの量、写真の絵柄、ブラウザのエンコーダ実装によって絶対値は変わります。傾向(等倍=実効72 dpi/文字ページはPNGが有利/写真ページはJPGが有利/倍率を上げても画素数ほどは増えない)は再現しやすい一方、KB単位の値はご自身のPDFで確かめてください。PDFを画像に変換には「サンプルPDFで試す」があり、この記事のAとまったく同じPDFをその場で書き出せます。

よくある質問

「2倍」は何DPIですか?
PDF上の1インチを何ピクセルで描くかという実効解像度では、等倍が72 DPI、2倍が144 DPI、3倍が216 DPIです。ただし書き出した画像に実効DPIが記録されるとは限りません。HTML仕様は形式が対応するなら96 dpiと定めていますが、実際の値はブラウザの実装によって異なり、今回測定したChromium系ではPNGに解像度チャンクが無く、JPGは単位なしでした。いずれにしても2倍の画像に144 DPIと書かれるわけではありません。
PNGとJPGはどちらを選べばいいですか?
ページの中身で変わります。実測では写真1枚のページでJPGがPNGの32〜59%まで小さくなった一方、文字が密なページの等倍ではJPGのほうが14%大きくなりました。文字中心ならPNG、写真中心ならJPGが安全です。
印刷用の原稿に使えますか?
一般に印刷用の原稿は300 dpi以上が目安とされます。A4を300 dpiで出すには2480×3508pxが必要で、倍率にすると約4.2倍にあたります。このツールの最大は3倍(実効216 dpi)なので、印刷入稿にはPDFのまま渡すことをおすすめします。
変換するPDFはサーバーに送られますか?
いいえ。PDFの読み込みも画像化もブラウザ内で完結し、当サイトのサーバーへ送信しません。この記事の実測値も、ツールとまったく同じ経路でブラウザ内で測ったものです。

本記事の数値は、中身の異なるA4・1ページのPDF3種類をChromium系ブラウザの canvas.toBlob() で書き出して測った実測値です(JPGは品質0.92・白背景、ツールと同じ設定)。冒頭の119倍は、同梱サンプルPDF(1.8 KB・3ページ)を2倍・PNGで書き出した3ページ合計 209.5 KB との比です。2026-08-10 時点。PDFの読み込み・画像化・測定はいずれもブラウザ内で完結し、当サイトのサーバーへ送信していません。